1.日時

令和7年3月7日金曜日午後3時から4時20分まで

2.場所

市防災センター403会議室

3.出席者

  • 委員長:谷川章雄
  • 副委員長:池上悟
  • 委員:松井敏也
  • 事務局:社会教育課長、社会教育課文化財担当副主幹、社会教育課文化財担当主査

4.欠席者

なし

5.議題

  1. 猪方小川塚古墳の保存整備後の経過報告について
  2. 白井塚古墳の保存整備について

その他

  1. 本検討委員会の位置付けについて
  2. その他

6.提出資料

  1. 猪方小川塚古墳の保存整備後の経過報告について
  2. 猪方小川塚古墳石室内の温湿度・土壌含水率報告その3
  3. 白井塚古墳の保存整備について
  4. (仮称)白井塚古墳公園平面図
  5. (仮称)白井塚古墳公園鳥瞰図
  6. 白井塚古墳調査全体図
  7. 白井塚古墳墳頂部調査区全体図
  8. 礫槨平面図
  9. 狛江市古墳保存整備検討委員会の位置付けについて

7.会議の結果

  • 会議に先立ち、社会教育課長挨拶。
  • 委員長、開会を宣言。
議題1.猪方小川塚古墳の保存整備後の経過報告について

猪方小川塚古墳公園は、令和7年4月に開園から5年を迎えます。公園整備に先立って実施した石室の保存処理からは、6年近くが経過することになるため、石室の保存処理後の状況について、これまでの経過と課題等を整理しました。

  • 事務局から、保存整備工事における石室の保存処理の方法について説明した後、公園開園後は、石室保存処理後のメンテナンスとして、3月に1回の頻度で、石室の状況観察と覆屋内部の環境測定データ(温度湿度変化)の回収を継続するとともに、公園開園当初から課題となっている白色物質やコケ類の除去作業、石室石材のヒビの補修や表面剥離箇所の補修を継続している状況を説明しました。なお、これらの補修等は、当初の石室保存処理の仕様に準じた方法で実施しています。
  • 基本的には、春から夏季にかけて保存処理後の経過観察と細かな補修作業、白色物質の除去・コケ対策等を行いつつ、秋以降、乾燥が進んだ季節に、強化薬剤の追加塗布等を行っています。
  • 令和3年度には、上記のメンテナンスに加えて、石室覆屋の西壁下の遮水処理改修を行いました。具体的には、保存整備工事において墳丘上に敷設した遮水シートが石室に向かって傾斜していることが原因となり、石室内部に雨水等が侵入している状況が確認されたため、石室覆屋内部の遮水シートを除去し、覆屋の外部に向けて立ち上げることで、墳丘上に降った雨水が覆屋内へ侵入することを防ぐ処置を行いました。
  • 令和4年度には、白色物質の除去に関して、石室石材の表面の保護・保存上、物理的な除去に頼らない方法を検討するため、薬剤の試験を実施し、結晶化前の白色物質の除去方法として、硫酸カルシウムスケール溶解剤の塗布が効果的であることを確認したため、これ以降、白色物質の除去に使用してきています。
  • 令和3年度に実施した石室覆屋西壁下の遮水処理改修については、一定の効果が見られるものの、前室の手前側の土壌が依然として湿度が高く、覆屋正面の強化ガラス下部の隙間から、雨水等が覆屋内に侵入している可能性が考えられたため、令和5年度には、強化ガラス下部の隙間を仕切り板と防水テープで塞ぐ作業を実施しました。
  • 令和6年度には、石室石材の表面剥離部分の接合、粉状化部分への強化剤の追加塗布を継続しました。合わせて、覆屋基礎柱を囲う仕切り板と覆屋側壁下部に設置した仕切り板の間に隙間があり、その隙間から、前室に向けて、雨水が侵入している状況が確認されたため、この隙間を塞ぐ作業を実施しました。なお、白色物質の表出、コケ類の発生については、前年度までと比較すると抑制されており、現時点では舗装土壌上には白色物質の表出は見られない状況であることを説明しました。
  • また、令和6年度には、覆屋内部にタイムタブスカメラを設置し、覆屋内への雨水等の浸入経路を特定しました。
  • 開園以後の経過は以上のとおりですが、これまでの経過と課題を受けて、令和7年度は、モニタリングと合わせて、以下の4点の改善策を実施する予定です。
  1. 石室覆屋内部への雨水等の侵入経路は、主に玄室と前室の境、墳丘の傾斜の屈曲点付近に絞り込まれてきたため、この部分を中心に、舗装土壌下部の遮水シートの傾斜を改善しつつ、必要に応じて追加で遮水シートを敷設する。
  2. 白色物質の表出が、当初に比べて落ち着てきているため、結晶化前に薬剤による除去を継続していく。
  3. これまでの遮水処理改修の成果により、乾燥が進んだ前室部分については、強化剤を追加で塗布していく。
  4. 白色物質の除去作業、遮水処理に一定の成果が見られることから、当初から課題であった石室覆屋内部を照らす人感センサー付きの照明を設置する。
  • 委員から、石室奥壁が一部崩落していたことについては、覆屋内に小動物が侵入し、内部を荒らしている可能性が考えらることから、今後、石室に大きな影響が生じないよう観察と対策が必要であるとの指摘がありました。令和6年に設置したタイムラプスカメラでは、具体的な姿を確認することはできませんでしたが、石室外周の舗装土壌上に足跡が残されていたり、舗装土壌を掘り返すなどの状況が見られることから、覆屋外周に自然素材を由来とする小動物忌避の薬剤を散布しているが、引き続き、状況を観察し、必要な対策を講じたい旨説明しました。
  • 委員から、石室覆屋内部への雨水等の侵入経路については、主に玄室と前室の境に絞られてきているが、玄室奥側が常に湿度が高い状況にあることから、覆屋奥手側の遮水シートの状況についても、一度確認しておく必要があるとの指摘がありました。
  • 委員から、遮水処理対策に効果により石室石材の乾燥が進むと、石材が若干収縮するため、当初の保存処理と同様の疑土により隙間を埋めていく作業が必要であること、また、前室部分を中心として、当初の保存処理の際に湿度が高く薬剤の含浸が不十分であったとみられる部分については、状況をみながら、強化剤の追加塗布が必要であることが指摘されました。
議題2.白井塚古墳の保存整備について

提出資料をもとに、白井塚古墳の保存整備について説明しました。

  • 事務局から、白井塚古墳の保存整備については、令和7年度に西側の擁壁施工の影響を受ける礫槨の一部の取り上げを行い、令和8年度に擁壁工事、令和9年度に全体の公園整備工事、令和10年4月1日に古墳公園として開園する予定であることを説明しました。
  • 礫槨の取り上げについては、影響を受ける範囲全体を固めて取り上げる方法や、ブロック単位で取り上げも検討しましたが、なかなか現実的ではなく、礫槨の掘り方を把握する必要性も踏まえて、礫の位置・レベル・向き等を1点ずつ記録しながら取り上げ、掘り方の調査も行った上で、擁壁工事後に礫を元の位置に戻す方法を採りたい旨説明しました。その際、樹木の根等の影響を受けて原位置を留めていない礫について、どこまで出土位置を復元するか検討しながら進めることになります。
  • 委員からは、2号礫槨の西側先端は、根の影響を受け、ほぼ原位置を留めていない可能性が高く、礫の取り上げと合わせて、掘り方の調査結果を踏まえて、どこまで復元するかを判断すべきとの意見が出されました。
  • 礫槨の一部取り上げについては、礫を1点ずつ取り上げる方法で行うことは、全会一致で了解され、どこまで復元するかは、礫の取り上げの際に掘り方の遺存状態を確認しつつ判断することとなりました。
  • また、取り上げた礫は、擁壁工事後に原位置に復元することになりますかせ、復元の時期については、擁壁工事後公園整備工事前とするか、公園整備後とするか、全体の工程を踏まえ、検討していきたい旨説明しました。
  • 事務局から、墳丘上の樹木については、墳丘の保存上、根も含めて取り除く必要があり、今後、現地の環境は大きく変わるため、礫槨については、復元後、埋め戻し保存を前提とし、展示の方法については、引き続き検討していきたい旨を説明し、了解を得ました。
その他
  • 事務局から、本検討委員会の位置付けについて説明しました。現在、本検討委員会は、教育委員会で定めた設置要綱に基づく委員会という位置付けですが、令和7年4月1日付けで狛江市文化財保護条例の全部改正を予定しており、将来的には、文化財保護審議会でも議論いただいた上で、文化財保護審議会の分科会としての位置づけに変更したい旨を説明し、委員からは了解を得ました。
  • 委員長、閉会を宣言。

狛江市古墳保存整備検討委員会委員名簿

委員長
谷川章雄(元早稲田大学教授、考古学)

副委員長
池上悟(元立正大学教授、考古学)

委員
松井敏也(筑波大学教授、保存科学)

公募市民委員がいない理由
審議内容が、古墳の整備等に関する極めて専門的な知識が求められることから、専門各分野の学識経験者で構成しているため。