校長室だよりNo.246 「大切な命」 ~令和8年1月13日校長先生のお話~
1学期にも2学期にも人権についてのお話をしたことを覚えていますか。1学期は「人権ってなんだろう」というお話でした。人権は人が生まれながらにしてもっている権利のことで、その権利は「人間らしく自分らしく生きること」「社会のきまりの中で明るく楽しく生活すること」「命が守られること」であるということでした。2学期は「人権はみんなにある」というお話でした。みんなのまわりにはいろいろな人がいるけれど立場が違っても、人権は一人一人がもっているものだとお話をしました。そして、人権を守るには思いやり、やさしさ、助け合い、助け合い、正しい知識が大切だということも伝えました。
今日は今年度最後の人権講話で「大切な命」についてお話をします。これは校長先生がまだ大学生で、教育実習に行った時のお話です。
ここに6mのスズランテープがあります。とても長いですね。実はこの長さは、みなさんのおなかの中に入っている腸の長さです。みなさんが食べ物を口から食べて飲み込んだら、その食べ物は小さくなっておなかの中に入っていきます。小さくなった食べ物はこの長い腸を通りながら、さらにドロドロになって、みなさんの体に必要は栄養を吸収していきます。そして、食べ物のカスや古くなった体の中の細胞が便として外に出ていきます。さっちゃんにはこの腸が15cmしかありませんでした。生まれた時から病気だったので、赤ちゃんのころから10回も手術をしていたからです。だから体がとても小さい子でした。それから、突然自分が何をしているのか分からなってしまうことがあって、教室から飛び出してしまったり、水の入っている水槽に体ごと入ってしまったりすることもありました。ですから先生たちも、特別に注意をはらう必要がありました。さっちゃんは学校が大好きで、学校に来ると一生懸命勉強したり遊んだりしていました。いつも明るくて周りの人を笑顔にする素敵な子でした。でも、体調を崩すことも多くて学校をお休みすることもありました。そんな時は、さっちゃんは「学校に行きたい」とお家で泣いていたそうです。そして、さっちゃんは「さしすせそ」がうまく言えなくて「かきくけこ」になってしまう子でした。
ある日、給食でごはんとコロッケが出ました。すると、さっちゃんは「けんけい、コークいりまけんか?コークいりまけんか?」と言いながら、コロッケにかけるソースを持ってきてくれたのです。さっちゃんの給食は、ごはんとコロッケをミキサーにかけてドロドロにしたものでした。もちろんソースはかかっていません。自分はかけないのに、先生のためにソースを持ってきてくれたのです。さっちゃん以外の人は自分の歯でソースのかかったコロッケを食べることができるから、その人のためにわざわざソースを持ってきてくれたのです。そのやさしい気持ちと行動に私は胸が熱くなりました。「さっちゃん、ありがとう」私が受け取ると、さっちゃんは笑顔で他の先生と一緒に自分のドロドロの給食を食べに行きました。ゆっくりゆっくり、喉につっかえないようにスプーンですくって、時間をかけて流動食を飲み込んでいました。嬉しそうなさっちゃんの顔は、とってもまぶしく見えました。さっちゃんとは、楽しい学校生活を約3週間送りました。その中で、できないことがあってもあきめずに頑張るさっちゃんの姿は、いつもキラキラ輝いていました。
教育実習最後の日、さっちゃんがこんなこと言ってくれました。「けんけいが、はやくほんとうのけんけいになって、かっちゃんのがっこうのけんけいになったらいいな」私は、「うん、早く本当の先生になって、さっちゃんのいる学校の先生になるよ。」と言って、お別れをしました。
それから約一年、私は本当の先生になったけれど、さっちゃんのいる学校の先生にはなれませんでした。そこで、さっちゃんのいる学校の先生に「私、本当の先生になれたよ。でもさっちゃんの学校の先生にはなれなかったの。いつか必ずさっちゃんのいる学校の先生になるね。」と伝えてほしいと連絡をしたのです。でも、さっちゃんにその言葉は伝えることができませんでした。さっちゃんは、11回目の手術のあと体調が悪くなってしまい、天国にいってしまったのです。
その時、私はさっちゃんに誓いました。「私はさっちゃんのように、一生懸命学校で勉強したり遊んだりする子供たちのために、先生として全力でがんばるよ!だから見ていてね!」
こうして私は今も学校で先生をやっています。さっちゃんと約束したことを最後まで守るために。さっちゃんの命は短かかったけれど、本当に自分の命を大切にして一日一日を過ごしていていました。さっちゃんの命は本当にキラキラ輝いていました。私にはそう見えました。命は一人に一つしかありません。そして命には終わりがあります。それがいつ終わるか分かりませんが、その命を輝かせるかどうかは自分の力です。どうか、自分の大切な命をしっかりと輝かせてください。そして他の人の命も大切にしてください。

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