慶岸寺に所在する2基の石造供養塔を市文化財に指定しました。
江戸時代前期の岩戸村(現在の狛江市岩戸北・岩戸南一帯)に、慶岸寺を拠り所として、民間信仰の集まりが結ばれていたことを伝える貴重な文化財です。

文化財の概要

慶岸寺の墓地入口に並ぶ2基の供養塔は、安山岩を用いて造られ、正面向かって左は地蔵菩薩立像を、右は聖観音立像を浮彫りしています。陰刻された銘文から、地蔵菩薩の供養塔は、慶岸寺の発願で、施主は岩戸村の村民8人であったこと、聖観音の供養塔は、川井助左衛門の母が発願し、岩戸村の同行26人の手で造立されたことがわかります。
聖観音の供養塔は、銘文に「念佛供養」とあることから、村内の念仏講によって造立されたものと考えられ、先の同行26人も、この念仏講のメンバーだと考えられます。さらには、発願が女性(川井助左衛門の母)で、女性が信仰対象とする聖観音を彫刻していることから、同行26人は女性であったとも考えられます。
一方、地蔵菩薩の供養塔は、銘文に「庚申」と刻まれていることから、庚申塔の一つと考えられてきました。この供養塔が庚申塔だとすると、多摩地域で造られた庚申塔の中で最初期のものになり、この時期に村内に庚申信仰の集まりが結ばれていたことになります。
両供養塔は、施主が異なるものの、造立年月日は同じ寛文2年2月10日になります。同じ村の中に結ばれた二つの民間信仰の集まりが、慶岸寺を拠り所として、密接な関係にあったことをうかがわせます。

【名称】寛文二年(一六六二)銘の石造供養塔

【指定年月日】令和2年9月29日

【種別】市郷土資料

【所在地】狛江市岩戸北四丁目15番8号

【所有者】宗教法人慶岸寺

寛文二年(一六六二)銘の石造供養塔

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