平成31年度 第4回狛江市立公民館運営審議会会議録

 

 

1 日 時   令和元年11月11日(月)午後7時20分~9時15分

 

2 場 所   中央公民館 講座室

  

3 出席者   斎藤謙一委員長、馬場信義副委員長、長谷川まゆみ委員、土屋陽子委員、深井秀造委員

        細谷明美委員、宗像政子委員

        事務局(安江真人公民館長、刈田美江子副主幹(兼)事業係長、髙橋公平主事)

 

4 欠席者   日向正文委員、髙尾戸美委員、伊地知俊二委員

 

5 傍聴者   0名

 

6 議 題

 1 開会

 

 2 審議事項

(1)諮問について 

    講師 伊東静一氏(東京都公民館連絡協議会顧問・元福生市公民館長)

  

7 配布資料  資料1 「現場の職員が感じている公民館事業の評価の課題」

           (月刊社会教育2006年2月号原稿)

        資料2 「フォローアップ、事業の点検・評価(自己評価、第三者評価)」

                資料3 平成31年度第3回狛江市立公民館運営審議会会議録

                資料4 公民館事業評価とは

 

8 会議の結果

 1 開会

 

 2 審議事項

  (1)諮問について 

      講師 伊東静一氏から資料4に基づき説明

  

  (2)質疑応答

      委 員)資料4は、福生市の公民館運営審議会によって作成されたものか。

 講 師)そのとおりで、福生市の公民館運営審議会委員3名によって作成されたものである。ただ、専門性が高いものができてしまったこともあり、公民館職員へ提出したところ、「参考にする」と回答してもらえるのが精一杯であった。公民館運営審議会としても、事業評価システムの導入が簡単ではないことは重々理解しており「すべての提案に応じるべきだ」というわけではなく、1つでも新しい考え方を取り入れてほしいという気持ちであった。

 「防災」に関する事業はたくさん実施されているが、「災害教育」という視点は東日本大震災以降から考えられるようになった。「災害教育」とは、災害発生時に対応できる力を平時から養っておくための教育である。こういった学習を通じて、地域で仲間のつながりが生まれ、共助の力も育むことができる。災害が発生したとき、市職員には要介護者や乳幼児を抱える職員もおり、すぐに避難所へ駆け付けられない職員もいる。また、現状では、災害時に非常勤職員は契約上招集されないこととなっている。こういったことからも、共助の力が災害時においては非常に重要であり、平時のときから、今のうちに当事者意識をもっている住民を育てておく必要があることが分かる。

 福生市は、地盤がしっかりしていることもあり、首都直下型地震を受けてもそこまで影響はないが、市外から来る避難者をどのように受け入れるかの体制づくりについて、すでに話を進めているところである。また、福生市には横田基地があるので、各地から災害用物資が空輸されてくると考えられる。それらを今後どのように供給していくかの仕組み作りについて検討を始めている。狛江市は、被災地になる場合もあるし、たとえならなかった場合でも、ヒト・モノについて何が供給できるかを平時のときから考えておく必要がある。

 また、防災については「学習」だけではなく、実際の「体験」が必要である。東日本大震災以降、福生市では、被災地である福島県飯舘村に、支援のため年に2回実際に訪問するなどして密接に連携している。他にも、福生市のイベントで、寄付金を集めて、支援金として飯舘村に送金している。こういった取組みにより、福生市が被災したとき、飯舘村に支援してもらえるような関係づくりができている。

 

      委 員)「SDGs」及び「ESD」が、何の略称かを教えてほしい

 講 師)SDGsとは、「Sustainable Development Goals」の略称で、「持続可能な開発目標」という意味である。ESDとは、「Education for Sustainable Development」の略称で、「持続可能な開発のための教育」という意味である。

 

 副委員長)公民館というのは、社会教育のための機関として位置付けられているが、近年、「社会教育」や「生涯学習」、「地域教育」とった言葉がよく使われている。これらの違いを教えてほしい。

 講 師)「生涯学習」とは、国の説明を引用すると、「生涯にわたって個々人の興味関心に基づいて、個人の財政的な範囲で選択して行うもの」と規定されている。つまり、個人の興味・関心に基づいて動かされるものなので、地域課題とは関係してこないことが特徴である。

 それに対して、「社会教育」とは、地域の課題を、当事者として一人ひとりの住民が、参加することによって課題を解決していく取組みである。その過程において、相互に学習や連携、共同していくのが特徴である。たとえば、ごみの分別が分からない外国人に対して、近隣住民がそれを地域の課題として認識し、話し合いを設けて外国人に学習してもらった場合は、「生涯学習」ではなく、「社会教育」の取組みであると言える。このように、地域住民が合意を形成する取組みの中で、当事者として参加し、問題解決していくことが「社会教育」と呼ばれる。

 「地域教育」とは、地域の住民が、市役所や学校、NPO法人、民間事業者等に関係なく、住民がひとりの参加者として、すべての人と対等な立場で、協働して課題を解決していくことである。「社会教育」からはじまり、豊かな生活から多様な学習が生まれ「生涯学習」が良しされたが、その反面、地域の課題を解決する担い手が少なくなってしまったことから、改めて「地域教育」に回帰しようという方向性が出てきたと考えられる。

 こういった公民館のこれまでの変化や、これから求められる役割等について、全国公民館連合会が発行している「公民館は、どう『語られて』きたのか?」という冊子に非常に分かりやすく説明が載っているので、是非読んでいただきたい。

 

 委員長)公民館は社会教育施設として、教育委員会に所管されているが、狛江市の場合は、各地域センターが、教育委員会ではない市長部局の地域活性課によって所管されている。一般的に、行政は教育に関する予算等に口を出せないことから、法律的な視点から見てこの体制はどう思うか教えてほしい。

  講 師)まず、教育委員会ができた背景として、昭和20年の第二次世界大戦敗戦が挙げられる。日本の敗戦後、GHQ(連合国軍総司令部)が日本の民主化政策に乗り出したことにより、教育委員会、農業委員会、選挙管理委員会等といった素人が参加する委員会が構築され、そして教育委員長が教育委員会を束ねていた。これまで、教育の中身について自治体の長が意見をすることは、教育委員会が行政から独立している組織であるという前提を覆すことなので、良くないこととされていた。ところが、三重県津市で起きた学校のいじめ問題をきっかけに、教育委員会があまり能力を発揮できず、その代わりに市長がリーダーシップを取っていじめ問題の解決に取り組み、その実績が評価されたということがあった。こういった事例が複数重なったことにより、文部科学省に対して、教育委員会制度を解体すべきという意見や、長が教育委員会を統制するべきという声が全国から寄せられるようになった。こういった背景から、公民館や図書館、博物館といった社会教育施設を、教育委員会ではなく、行政が管理できるよう選択できるようになった。

 その他としては、社会教育施設の管理の問題についての事例をいくつか紹介したい。たとえば、ある市では教育委員会が博物館を管理することで、定時時刻(9時から17時まで)しか開館できず、それは観光地としてふさわしくないのではないか、公共の社会的サービスに反していないかといった視点から、教育委員会の所管から外すべきであるという意見が出た事例もある。また、民間企業と連携して佐賀県武雄市では図書館にスターバックスを併設し、利用者が3倍となった。一見、サービスが良くなったように見えるが、武雄市の歴史ある土器の展示スペースがなくなり、売れる週刊誌ばかりが展示されるといった良くない面もある。こういった事例からも、社会教育施設については、地域の住民が求めるものは何かを考えて、教育委員会で運営するのか、一部だけ民間企業に委託するのか、あるいはすべてを指定管理者に委託するのかといった様々なパターンから、最もふさわしい管理方法を選択することが大切である。

 

 委員長)指定管理の運営についてどう思うか具体的に教えてほしい。

 講 師)たとえば、佐賀県では指定管理を町会・自治会に対して委託したが、5年程度しか続かなかったという市の事例がある。指定管理は、都会のような人口が多く、事業者がたくさんあるところは可能性があるが、農村地域といった過疎地では運営していくのは難しい。また、小金井市では、公民館の5館あるうちの2館は教育委員会が管理をし、残りの3館はNPO法人が管理している。管理者が異なると、職員の働き方が変わってしまい、住民にとっての公平性が失われてしまう可能性があり、公共の社会的サービスにおいて不利益を被る市民がでてきてしまう。指定管理には、メリット・デメリットの両面があるところを認識しておく必要がある。

 

 委員長)講師の話を聞いていると、事業評価を考える前に、まず狛江市の公民館のあり方について考える必要があると感じた。そのあり方・方向性を決めてから、事業評価について進めていく必要があるのではないか。

 講 師)そのとおりで、狛江市の公民館にはこうあってほしいという将来像を描いてから、事業評価を位置付けておけば、事業評価するときも公民館の現状・現在地が分かりやすくなる。福生市では毎週職員を3つのグループに分けて、月2回程度、公民館が抱える課題について話し合った。この作業を3ヶ月やって、ようやく事業評価の土台ができた。

 

 副委員長)狛江市の公民館運営審議会は年に4回あり、それに加えて、諮問のための準備が2回ある。時間的に事業評価を作成していくことは厳しいと感じる。

 講 師)狛江の公民館運営審議会と職員で話すしかない。公民館がどういう位置付けなのかということを、住民から意見を集めないといけない。たとえば、市の公共施設再編の取り組みとして、いきなり公民館を閉館すると言われたとき、日頃から何も準備をしていないと、必要性の理由付けや住民説明等に間に合わなくなり、本当に閉館せざるを得なくなる。そうなる前に、平時から公民館の存在意義や学ぶ意義を、市民を巻き込んで議論していく必要がある。そういった市民と行政が一緒になって課題を解決していくことが大切である。

 福生市では「運営審議会だより」を2ヶ月に1回発行している。発行に伴い、市民がボランティアとして無償で協力してくれている。また、その運営審議会だよりを見た市民から意見が寄せられることもよくある。こういったことからも、市民にも公民館と運営審議会の活動がよくみえている人が多く、公民館に対する市民の意識が高く、市民の目が育っていると言える。

 

 委 員)公民館の事業評価体制について、福生市以外はどのようになっているか。

 講 師)各公民館の館長と職員が評価している市がほとんどである。職員が1次評価して、館長が2次評価するという仕組みもあれば、館長が公民館運営審議会にまず評価を提出して、公民館運営審議会に意見を求めるといった形式をとっている市もある。

 

 3 その他

 委員長)他に質問がなければ、以上で本日の会議は終了する。次回は1月20日(月)午後7時20分から中央公民館第一会議室にて開催する。