平成30年度第2回猪方小川塚古墳保存整備検討委員会議事録

1.日時

平成31年3月28日(木曜日)午後7時から8時30分まで

2.場所

市役所防災センター402会議室

3.出席者

委員長:谷川章雄
副委員長:池上悟
委員:松井敏也
事務局:加藤達朗、宇佐美哲也、松下祐三(社会教育課)

4.欠席者

なし

5.議題

1.保存整備工事の平成30年度の進捗状況について

(1)実施設計について

(2)保存整備工事の平成30年度の進捗状況について

2.保存整備工事の平成31年度の施工予定について

3.その他

6.提出資料

・猪方小川塚古墳公園 完成イメージ

・猪方小川塚古墳公園整備及び保存整備工事全体工程(当初予定)

・猪方小川塚古墳保存整備工事(配置図、覆屋平面図、立面図、断面図)

・猪方小川塚古墳保存整備工事(平成30年度の進捗状況)

・猪方小川塚古墳保存整備工事(平成31年度の工程(予定))

7.会議の結果

・委員長が開会を宣言。

議題1.保存整備工事の平成30年度の進捗状況について
(1)実施設計について

・事務局から、平成29年度の検討委員会において承認された実施設計の内容について、公園全体について、墳丘について、石室覆屋について、の3点に分けて概要を説明しました。

(2)保存整備工事の平成30年度の進捗状況について

・事務局から、(1)に基づき着手した平成30年度の保存整備工事の進捗状況について報告しました。
・工事に先立ちまず9月下旬に、公園外周の擁壁設置工事に伴い掘削される部分を対象に、墳丘の遺存状況を確認・記録するための発掘調査を実施しました。調査の結果、墳丘は当初の調査で把握されていた範囲の外側までは遺存せず、擁壁が設置される予定範囲では、墳丘の北側の一部で墳丘の広がりが確認されたため、その広がりと断面調査を行い、平成23・24年の調査の際に記録した墳丘断面図に一部加筆したことを説明しました。
・引き続き、10月から公園整備第Ⅰ期工事として、公園敷地外周の擁壁工事、擁壁上のルーバーフェンスの設置を行い、11月末には現地の作業を終了しました。
・これに引き続き、保存整備工事に着手し、11月には石室を一度空けて石室壁面を保持する鉄骨作成のために石室内の実測作業を行い、再度埋め戻しを行いました。12月には敷地の仮囲い設置・現場事務所の搬入・設置を進めるとともに、墳丘に極力影響を与えないように仮設構台の設計の再検討を進めました。
・平成31年に入り、1月には墳丘東側に仮設構台を設置し、2月にはこの構台を使用して石室覆屋の基礎杭打ち工事、3月には基礎杭の上に基礎打設工事を行いました。平成30年度は、石室覆屋の基礎工事までとなりました。

議題2.保存整備工事の平成31年度の施工予定について

・事務局から、平成31年度の保存整備工事の工程案について説明しました。
・工事は平成30年度から継続し、4月半ばには石室覆屋の建て方工事に着手する予定ですが、この際、石室内部を空ける必要が生じるため、この時点から石室石材の保存処理に着手することになります。保存処理については、覆屋の建て方工事の進捗にもよりますが、覆屋の柱、梁、屋根材が組まれた状況となることから、屋根や壁面を覆い、一部に換気口を設けた内部で進めていく予定です。その後、墳丘の外周を囲む浸透管の埋設工事や墳丘盛土工事など土工事を進め、最終的に覆屋の壁面ルーバーの取り付け、観察部分の強化ガラスの取り付け、8月には仮囲い、仮設等の撤去を行い、保存整備工事は終了の予定です。
・引き続き、復元された墳丘上の植栽や、手前側のベンチ、雨水処理施設等を含めた公園全体の工事を行う予定です。
・石室の保存処理については、側壁はクリーニング・精査のうえ現況を記録した後、乾燥の進み具合を勘案しながら薬剤を噴霧する方法で、石室床面については、クリーニング・精査の後、礫の間の土壌に薬剤を塗布する方法で、それぞれ固化する計画であること、石室門柱部分については、パラロイドを混入した薬剤を、状況をみながら塗布していく計画であることを説明しました。また、石室外側の土壌が露出する部分については、土壌固化材を用いて保護する方法で保存処理を進める予定であることを説明しました。
・委員からは、石室床面の保存処理方法については、礫の間に露出する土壌を固化するのではなく、露出した土壌のうえに一枚皮膜を作る形で保護すべきとの指摘がありました。また、壁面のうち、調査当初から遺存状況が悪く崩落が進んでいる部分や切石が欠落している部分については、素材を検討したうえで補填すべきとの指摘がありました。
・委員からは、事務局から提示された工程案であると、場内の雨水処理など、湿度管理ができていない状態で保存処理に着手することになる点について、雨水などが石室に湿気を与えないよう十分な覆屋根を設置する必要があることや、保存処理期間中の湿度管理上は、やはり石室の保存処理前に浸透管の埋設を行うべきとの指摘がなされました。さらに、当初予定していた工程案に比べ、保存処理期間が遅れてきていることから、処理期間が梅雨にかからないようにすべきとの指摘がありました。
・事務局からは、覆屋建て方工事の進捗状況次第の部分があるものの、極力早めに保存処理に着手できるように進めていくこと、保存処理中の仮設覆屋根の形状・大きさについては再度検討すること、合わせて、石室内で保存処理を行う前に、墳丘外周への浸透管の埋設工事を済ませるように工程を見直すことができるかどうか再度調整する旨説明しました。
・また、委員からは、保存処理期間中、作業者や近隣に影響が生じないよう覆屋内部の換気には十分に配慮すべきことが改めて指摘されました。
・さらに、委員からは、覆屋のメンテナンス用の出入り口について、この規模で十分な出入りが可能なのか再検討すべきとの意見が出され、必要に応じて出入り口部分の床面の補強等も必要ではないかとの意見も出されました。
・委員会としては、以上の点を踏まえ、保存処理期間が梅雨にかからないように、極力早めに保存処理に着手することを要望するとともに、天候が不順となった場合、環境が整わないなかで、無理に保存処理を進めないことなどが要望されました。

議題3.その他

・今後の委員会については、梅雨の時期にかからないよう早めに保存処理に着手する必要があることから、4月半ばに保存処理の方法を再度整理したうえで、4月下旬に委員会を開催し、具体的な保存処理の方法を確認していくことで決定しました。
・また、委員からは、開園後の公園の名称について、正式名称は決定しているのかとの質問が出されました。事務局からは、基本的に古墳の正式な名称「猪方小川塚古墳」に「公園」を付して「猪方小川塚古墳公園」が基本になるのではと回答しましたが、委員からは、正式名称とは別に親しみやすい愛称を公募する、歴史公園を包括するような名称を検討するなど、工夫が必要ではないとの意見が出されました。

・議長、閉会を宣言。

猪方小川塚古墳保存整備検討委員会委員名簿

委員長
谷川章雄(早稲田大学教授・狛江市文化財専門委員、考古学)

副委員長
池上悟(立正大学教授、考古学)

委員
松井敏也(筑波大学教授、保存科学)

公募市民委員がいない理由
審議内容が、石室石材の保存処理、古墳の整備等に関する極めて専門的な知識が求められることから、専門各分野の学識経験者で構成しているため。