1 日時

平成23年10月16日(日)午前9時30分~午後0時15分

※質疑応答により当初の予定より30分延長する。

2 場所

あいとぴあセンター2階 研修室

3 出席者

  45人(市職員等関係者は除く。)

4 構成

 

(1)開会    挨拶:小泉 一夫(委員長)教育部長 

(2)基調講演

「学校給食における今後の課題について~多様化するニーズにどう応えるか~」 

   講師:金田 雅代先生(講師) 女子栄養大学短期大学部教授

(3)給食センター施設整備にかかる進捗状況の報告

   説明:大久保 正紀(事務局) 学校教育課学事給食係主事 

(4)パネルディスカッション

   コーディネーター:上田 智弘(委員) 教育部学校教育課長

   パネリスト:小泉 一夫(委員長)   教育部長

         池田 信也(委員)    狛江第一中学校長

         栗山 剛(委員)     狛江市PTA連合会長

         登坂 友美(委員)    緑野小学校栄養士

         川崎 潤也氏       衛生管理アドバイザー

  コメンテーター:金田 雅代先生(講師)女子栄養大学短期大学部教授

(5)閉会

   総括:上田 智弘(委員)       教育部学校教育課長

 

 ※ 司会進行:宗像 秀樹(事務局)  学校教育課学事給食係長

5 配布資料

  1 プログラム

2 給食センター施設整備にかかる進捗状況の報告(パワーポイント資料)

3 中学校給食啓発パンフレット

4 女子栄養大学案内等パンフレット

5 アンケート用紙

6 報告

 

(1)開会・挨拶 小泉委員長

 市民フォーラムの開催の趣旨と目的及び、これまでの経過についての説明を行う。

 

(2)基調講演 金田雅代氏

 学校給食は学校現場における食育の中心であり、生きた教材である学校給食を活用した「食に関する指導」を一体的に展開することが重要であるといった話を中心にご講演いただく。

「なぜ学校で食育を行うのか」、「学校給食における課題」、「給食センターとしてのこれからの課題」などについて、法令基準や子どもの食生活の現状、科学的検証を織り交ぜながら、学校給食の意義について出席者に問いかけがあった。

 基調講演の主な内容(概要)は以下のとおりである。

【なぜ学校で食育を行うのか。】

 知育、徳育、体育の基礎となるべきものとして食育基本法が位置づけられ、将来を担う子どもたちを対象に、食の重要性について問われている。また、保護者自身も食生活が変わり、家庭で望ましい食生活が実践できなくなっているという指摘もあり、学校・家庭・地域社会が一体となって食育を行っていかなければならない。

【なぜ国が食について法として位置づけたのか】

 生活習慣病等を理由に、医療費が増大し、医療制度の運用が難しくなっている。この対策の一つとして、食育基本法を策定し、様々なライフステージごとに望ましい食習慣、生活習慣、自己管理能力を身に付けるよう示している。

【食生活の変化】

 摂取エネルギーは戦前とあまり変化していないが、内容が変わってきた。畜産物、油脂類の摂取が増えてきており、このような食生活が続くとメタボリックシンドロームになる。それを防ぐため、子どもたちに自己管理能力を身に付けられるような学校給食を行うことが重要である。

【なぜ教科で学んだことを給食につなげるのか】

 教科で学習し、その内容について学校給食を教材にして、繰り返し学習することが実践的な態度につながっていく。例えば、家庭科で五大栄養素を習うが、栄養素の大事さはわかっていても、実際の食生活で実践してもらわなければ意味がない。学校給食は、子どもたちの実践力を育てるという意味でも大きな役割を持っている。

【学校における課題】

 学校給食の目標は7つ(学校給食法第2条)あり、その内容を意図して、献立がたてられ、その給食を生きた教材にしながら、食に関する学習を進めていくことで、なんとなく食べるのではなく、考えながら食べる力を育むことが食育となる。学校では「生きた教材」である学校給食を活かした食育を実践することである。また、個別的な相談指導に対応する。例えば、食物アレルギー、偏食、肥満、痩身、スポーツ栄養、噛むこと等の相談にも対応していくことが求められている。

【給食センターを建てる上での課題】

 給食センターは、アレルギーへの個別対応・地場産物の活用・災害時の対応・食育情報発信の場等の要素が求められている。一度建てれば20年から30年は建て直すことはできないので、十分に検討する。また、建設にかかる費用を、給食を食べる子ども、兄弟、両親の数で割ると、これほど平等な税金の使い方はない。そのためにも、多くの市民、保護者の方々が、給食に関心をもって、積極的に関わっていくことが望ましい給食センターの実現に繋がる。

【世界の飢餓状況】

 昨年チベットの学校給食を見る機会があった。何らかの事情で孤児になった子どもたちを集めた学校の給食は、日本の給食と比べると、質素で、一食が少量であった。米1粒まで残さず、最後は皿を舐めていた。日本でも、東日本大震災以降、被災地で学校給食が再開されたとき、震災前と比べて、子どもたちが残さず食べていると聞いている。実体験しなければ行動変容につながらないのは仕方ないかもしれないが、同じ地球上で、限られた食事で命を繋いでいる人達がいるという現実を、大人も子どもも忘れてはならない。

 

○質疑応答

 質疑応答では、出席者から子どもたちにもっと野菜や魚を食べる大切さを知ってもらうにはどうしたらいいか質問に対して、「まず、学校の食育推進全体計画の中で、野菜や魚を食べることが大切であることを学習する場を位置づけること、子どもだけでなく保護者も含めて指導していくことである。家庭は学校任せにしないで、学校で行う食育の受け皿としての役割を忘れてはならない。栽培活動、試食会、食育授業の参観、毎日の給食にも関心を持つこと。一食一食は生涯の健康を保障する健康貯金であり、大人が食物、食事に感謝していただく姿を子ども達に見せることである。家庭では好きなものばかり並べておいて、学校で偏食をどうにかしてほしいというのもおかしな話である。」との回答をいただく。また、「狛江市が多額の費用をかけて給食センターを作った結果、喫食率が低かったら税金の無駄遣いになってしまう。建設に当たって、関係者一同が給食の果たす役割を共通理解し、教育の一環として取り組んでいかないと、現在のように民設民営で喫食率が下がっていった状況と同じようなことになる。学校給食は子ども達に望ましい食習慣の形成と食の自己管理能力の育成を目指すものである。好きな献立ばかり実施すれば確かに喫食率は上がるかもしれないがそれでは弁当屋で好きなものを買って食べることと同じになる。好きな給食、我慢して食べる給食、成長期真っ只中の子どもたちにはバランスの取れた食事を繰り返し食べることが重要である。そのためにも、美味しくて、安全・安心な食事の提供できる給食センターの建設と100パーセント完全給食をお願いしたい。」との意見をいただく。

 

(3)教育委員会事務局による給食センター施設整備にかかる進捗状況の報告と質疑応答

 担当職員から給食センター施設整備にかかる進捗状況の報告について、パワーポイント資料に従って、第1部「給食センター施設整備の経緯について」、第2部「給食センターの施設概要について」に分けて説明する。

 第1部「給食センター施設整備の経緯について」では、中学校給食の開始から課題の発生、中学校給食のあり方検討委員会の設置から審議及び提言を経て、現在狛江市給食センター施設整備準備委員会(以降、当委員会と言う。)が設置され、給食センターの施設整備について検討していることを説明する。

 第2部「給食センターの施設概要について」では、給食センター施設整備における基本事項や施設概要、HACCP方式について説明し、後半は狛江市給食センター施設整備準備委員会のこれまでの検討経過とコンセプトについて報告する。

 

○質疑応答

質疑:給食センターの規模が1,500食という説明だったが、この数字は今後喫食率が100パーセントになるという想定で設定しているのか。

回答:現在1,000食を超えている日もある。また、将来的な展望も含め、教育委員会としては全員給食を目指し、1,500食程度の施設規模を想定している。

質疑:給食センターは文部科学省の学校給食の定義に当てはまるものなのか。

回答:学校給食として提供する以上、学校給食法に則った目標を持ち、生徒全員が給食を食べ、食について学んでほしいという前提がある。公平性の観点からも、それに対応できるものとして検討している。

質疑:今後のスケジュールを教えてほしい。

回答:建設予定地に隣接する東京都下水道局の貯留槽施設や特別養護老人ホームの計画等の関係もあり、それらと調整して、施設整備準備委員会の目安として平成27年9月に運用開始を予定している。

質疑:統廃合の話が出ているが、統廃合を想定して作るのか。統廃合前では二度手間にはならないか。市の財政のことも考慮し、完了してから作ったほうがよいのではないか。

回答:異物混入等の課題が生じ、市としては栄養士の毎日の現場での確認作業や、職員による抜き打ちチェック等を行い、改善に努めた。現在は異物混入件数は減少の傾向にあるが、同時に民設民営の衛生管理の限界を感じている。統廃合等による将来的な展望を想定するとは、あくまで再検討を行うことができる施設を想定したものであり、当面の間においては現行のボックスランチ方式の給食を提供する形で給食センターを予定している。

質疑:一度施設を建て、将来的に後から手を加えることについてどう考えているのか。

回答:市としては経済性というコンセプトで説明したとおり、費用負担に関しては、できるだけ低く抑えるよう努めている。

質疑:食数と規模の関係で、1,500食と1,200食との差がセンターの設備や規模に影響があるか。

回答:食数が極端に減れば、施設の規模の縮小は考えられるが、必ず必要な設備や備品があるため、1,500食から1,200食にして、規模が小さくなるとは言い難い。ただ、経済性のコンセプトから、無駄のない施設規模となるよう検討している。

質疑:食缶方式に移行した場合、食缶を洗うスペースを想定しているようだが、食缶に移行するには各校にエレベーターやサテライトキッチン等の設置が必要になるが、将来的にそういったことができるという担保があるのか。そういったものがないと予め食缶を洗うための洗浄ラインのスペースを確保するのは無駄ではないか。

回答:将来的な展望については、庁内委員会である「中学校給食のあり方検討委員会」の答申にも示されており、提供方式については当面の間は現行のボックスランチ方式としている。

また、今後統廃合や移転という課題があり、それらが整理された時点において、給食の提供方法を再検討できるよう想定しているものである。そのため、食缶方式を想定しているとは、あくまでも一般的に多くの給食センターで取り上げられている一つの提供方法を想定しているということである。洗浄ラインについてはボックスランチ方式でも必要なものである。食缶方式に移行した際の洗浄ラインが増えた場合の面積増加については現段階の検討においては約50平方メートルと見込んでいる。将来的な展望を踏まえて、どの程度の面積が必要かどうかは現在検討しているところである。

質疑:建設予定地である旧狛江第七小学校跡地の緑を利用してほしいという要望があるが、住民の要望を取り入れられるのか。予定地周辺への住民要望への配慮はどうなっているのか。

回答:給食センターの建設は既に市として決定していることである。当委員会は給食センターについてどのような施設整備を行うか検討する組織として位置づけられている。給食そのものの是非や給食センター設置の可否、給食の提供方法などについて議論を進める委員会ではないことを理解してほしい。旧狛江第七小学校跡地全体の計画等については、当委員会として回答することはできない。

質疑:今後も市民フォーラムやパブリックコメントや計画ができた後の説明会など市民の意見を取り入れる予定はあるのか。

回答:本日のフォーラムを、給食センターの施設整備に向けてどのような施設にするのかその方向性を説明し、市民の皆さんから給食センターについてご理解やご意見をいただく場として位置づけている。本日のフォーラムでいただいた意見は、今後の委員会の検討材料とし、当委員会の最終報告にて示していきたい。また、本日のフォーラムの内容については、後日、概要をまとめ、ホームページ等で公開する。

質疑:夏休み中、給食センターは休みになるのか。

回答:給食がない時は工場ラインを動かす必要はないが、給食が行われている期間は施設を止めることができないので、休みの間に点検や清掃等を行うことが必要不可欠である。また、当委員会では、施設整備に関わることから、給食センターを活用した食育事業等をこの期間で実施できないか意見交換しつつ、検討している。

質疑:食育の大切さはわかったが、事務局説明にあったコンセプトの中で最も重要視するのは、衛生管理・経済性という話だった。食育については、教育現場は与えられた給食を使って食育をしていかなければならない。食育ができるから施設をこうしなくてはいけないという逆方向からの提案はあまりない。しかし、衛生管理や地域の食材を使うというのは良いことだと思う。給食センターは市民と行政がつくるものである。給食センターをつくるにあたって、市民が中心になるべきである。市民が十分に納得するためにも、今後も市民フォーラム等を企画してほしい。

回答:食育についてはコンセプトにも入っているように、大変重要なものだと認識している。検討段階ではあるが、食育の一環として給食センターに見学スペースの確保を考えている。給食センターが給食に関してより一層の理解を得られるような観点からも施設整備ができないか検討している。市民の皆さんの意見を取り入れる機会の検討に関しては、意見として受け止めたい。

質疑:金田先生の話にもあったように、手づくりの給食や質の向上を目指し、小学校のような狛江らしい給食をつくってほしい。

回答:意見として受け止めたい。狛江らしい給食は、コンセプトの地域にあたる。例えば現在の中学校給食では朝早く調理場まで地場野菜を届けるのが難しい現状がある。しかし、市内に給食センターができれば、その点においては地場野菜の使用が容易になると考えている。地場野菜の受入れのために、泥つき野菜用のシンクの導入も検討している。また、調理場での手づくりとは異なるが、現在、市内の障がい者の方々が作る手づくり餃子を中学校給食では取り入れており、このような取組みは狛江を知っていただく良い機会になると考えている。

質疑:金田先生の話がとても良かったので、参考にしてほしい。給食センターを新しく建設するのであれば、狛江第一小学校裏にある東京航空計器の土壌問題を繰り返さないでほしい。税金を使うので、しっかりした施設を建ててほしい。

回答:保健所等関係機関の指導を受け、適切な施設整備を行っていく。

 

(4)パネルディスカッション

 はじめにコーディネーターから本日のパネルディスカッションが給食のあり方や給食センターに期待することがテーマであるとともに、狛江市給食センター施設整備準備委員会の代表と専門家である衛生管理アドバイザーがパネリストを務め、様々な立場や考えから意見交換を行うことを説明する。次にコーディネーターからパネリストに対し、自己紹介と以下の3つの質問に対する発表をお願いする。

 ・中学校給食の課題

 ・どんな給食を食べてもらいたいか

 ・給食センターに期待すること(給食のあり方について)

 

○パネリストの発表

(小泉委員長)

 始めに中学校給食の課題についてだが、衛生管理が課題としてある。先ほど事務局報告でもあったとおり、中学校給食では異物混入等の課題があった。現在においては、市栄養士の毎日の派遣や衛生管理指導の徹底等の改善に努めた結果、件数は減少したものの、コスト重視の民間企業による民設民営の調理委託では安全安心な給食に限界があることがわかった。

 また、喫食率も課題であると思っている。現在の中学校給食の喫食率は平成22年度平均で67.44パーセントとなっている。喫食率向上の取り組みとして、昨年度では小学校6年生の保護者を対象にした試食会の実施や、今年度では本日配っている啓発パンフレットの各学校への配付を行っている。中学校“給食”と謳っている以上、100パーセントの喫食率を目指した給食を目指していきたい。

 次にどんな給食を食べてもらいたいかだが、中学生は大事な成長期の時期なので、適切な栄養を摂取してほしいと考えている。今後、成長し自分自身で食事を選択するときに、正しく選択する力を給食を通して身に付けてほしいと願っている。

 また、給食を通して食の楽しさやありがたさを感じてほしい。リクエスト給食の実施や写真入りカラー献立の配付等を行い、子ども達に食への関心をもってもらうよう取り組んでいるが、今以上に食への関心の向上を目指したい。

 中学校給食の課題とどんな給食を食べてもらいたいかの2つを兼ねたものとなるが、現在の中学校給食では施設的な理由で限られている地場野菜の使用をもっと増やしたいと思っている。それに伴い、市内で作られた野菜を子ども達に食べてもらうことで、自分の住むまちへの愛着や連帯感を感じてほしい。

 最後に給食センターに期待することだが、冒頭で課題として触れたとおり、衛生管理は最重要事項であると思っている。給食センターの施設整備にあたり、より高いレベルの衛生管理を確立することで、より安全で安心な給食を子ども達に食べてもらいたい。そのための手段としてHACCP方式の考え方を取り入れることには大変意味を感じている。

 また、給食センターをただの給食調理施設として建てるのではなく、その先にある学校給食の運営を見据えた給食センターを検討していきたい。それには喫食率や食への関心の向上、また現在では限りのある地場野菜の使用といった学校給食の運営上で取り組むべき課題を、給食センターの施設整備の工夫によって少しでも改善できれば良いと考えている。そのようなことを含め、衛生管理・食育・地域・環境配慮・経済性の5つのコンセプトの中では、衛生管理と経済性に重きを置きつつも、食育・地域・環境配慮の要素をできる限り盛り込めるような検討を進めていきたい。

 給食センターが建つ以上、給食として今以上に良いものを提供したいと考えている。例えば、現行の中学校給食では設備・人員等を理由に難しくなっている手づくりの提供や汁物の増加などができる施設整備を目指していきたい。

 そのためにも、今回のフォーラムでは是非、給食センターの方向性や5つのコンセプトについて来場された皆さんの意見を聞かせてほしい。

 

(池田委員)

 中学校給食の課題についてだが、1つめは安全な食事を食する機会にしてほしい。2つめは栄養バランスの良い食事を食する機会にしてほしい。栄養摂取量を十分配慮した給食が良い。3つめが味覚を育ててほしい。献立や食材等、多様な食について知る機会になると良い。最後に4つめがこれまでの話を総括して、食育を推進する機会にしたいと考えている。

 どんな給食を食べてもらいたいかについてだが、先ほどの話と重複するが、安全なものを食べてもらいたい。次に狛江や近隣地域から採れたもの、国産や地産地消のものを食べてもらいたい。また、季節感とか日本の伝統を加味した給食も良い。

 給食センターに期待することだが、給食センターが市内に建つのであれば、今より近くなるため、いろんな面で融通が利くようになると思う。献立や食材等で栄養士の思いが通じ易くなるような給食センターを建ててほしいと考えている。

 

(栗山委員)

 中学校給食の課題とどんな給食を食べてもらいたいかについて合わせた回答になるが、理想としてはやはり喫食率が100パーセントになって、小学校給食と同じようにお昼時間には全員が同じものを食べるようになってほしい。特に不況下の中、保護者の皆さんの中には共働きの家庭、また父子家庭等の理由によりお弁当が作れないといったことがあると思う。そのような中で、皆で仲良く楽しく食べる給食になってほしい。また、お金が払えない等で経済的に苦しい方もいるので、そのための対策もしっかり考えてほしい。

 次に給食センターに期待することだが、災害時に食料が提供できる給食センターになってほしい。

 また、将来は学校給食だけでなく一人暮らしの老人の方々にも給食として提供できるようになると良いと思う。

 

(登坂委員)

 中学校給食の一番の課題は、温度管理であると考えている。直営の小学校では、運ぶ距離が無く食缶方式ということもあり、給食時間開始に合せて直前に仕上げるため、温かいものが提供できる。同じく、冷たいものも時間を調整し、納品されてそのまま提供するデザートなどは納品時間を直前にする。手づくりのデザートなども直前まで専用の冷蔵庫で冷やす等の工夫をしている。温度管理は、衛生面でも重要だが、温かいものは温かいまま、冷たいものは冷たく食べることは、そのままおいしさに繋がるため、食事作りにも大切なことだと思う。現状のボックスランチ方式では衛生管理上、一度すべての食材を冷まさなければならないが、汁物を毎日付ける等の工夫によって温度の改善ができると良い。

 そしてもう1つ、中学生になると、食の嗜好を変えることはとても困難なため、嫌いなものをなかなか食べようとしなくなる。自分自身の健康づくりにどれだけ食事が大切なのかということを、考えながら食べてほしい。食の大切さについて給食を通して伝えていくことが課題だと思う。

 次にどんな給食を食べてもらいたいかだが、重複するが、先ほど述べたように、温かいものは温かいまま、冷たいものは冷たく食べてもらいたい。この温度管理ができてくれば、野菜もたくさん食べてくれるようになるのではないか。彩(いろどり)も良くなる。また、献立の幅も広がり、和食もどんどん取り入れられる。和食には野菜を多く使うが、野菜は栄養だけではなく、旬などの季節を感じることができ、この季節感をとおして、地産地消にも繋がっていくと思う。

 ほかには、市販の物は、どうしても噛み応えのない柔らく、味が濃いものが主流のため、咀嚼や生活習慣病予防の点から注意が必要になる。食材自体の持ち味を生かした手づくりのものを食べて欲しい。

 最後に給食センターに期待することだが、給食は、子どもの心身ともに健全な発達と食生活の改善のため、栄養を考えて作られているものであり、毎日繰り返し食べてもらうことで目標が達成できる。このことから、毎日楽しく食べてもらえるような給食を提供できる施設になって欲しい。

 また、市内に給食センターができるということを大いに生かしてほしい。例えば、見学できるようにする、職場体験の受け入れ先にする、他にはこまバスの絵手紙の装飾のようにトラックに食育の装飾をするなど食育の情報を発信する、これらのような様々な工夫ができる給食センターになってほしい。

 

(川崎衛生管理アドバイザー)

 給食センターを建てることになった大きなきっかけとして、異物混入の課題があるとの話だが、衛生管理は出来ていて当たり前のもので、それだけを目的にしてはならないと捉えてほしい。次にHACCPについてだが、難しい言葉だが簡単に説明すると家庭のキッチンと同じものと考えてほしい。綺麗なキッチンをいかに作るかということが字で書いてあるものと思ってほしい。例えば、安全でおいしい朝食を作るのに、前の日の夕食で使った皿がキッチンに残っていては安全でおいしい朝食は作れない。これを改善する。HACCPとは、これと全く同じ考え方を給食センターで実現することである。ただし、家庭のキッチンとは1つ違うところがあり、給食センターでは科学的に管理することが求められる。科学的にとはどういう意味かというと数字や温度を記録し、しっかりと安全が確保されていることを証拠として残すことである。例えばから揚げを揚げる際には、から揚げの中心温度が75℃以上で1分以上加熱され、食中毒の原因となる食中毒菌がきちんと殺菌されていることを確認することが求められる。これがHACCPの大まかな考え方であり、この考え方を徹底的に給食センターで行うことが衛生管理の主なコンセプトとなる。

 次に給食センターに期待することだが、中学校だけでなく小学校の栄養士も含め、この給食センターを活用して衛生管理の講習会を行い、小学校給食の衛生管理の向上にも活用してほしい。

 

○コーディネーターから中学生との意見交換について報告

(上田委員)

 当委員会では、給食センター設置状況の話と中学生の生の意見を聞くために、順次、中学校へ出向いて意見交換会を行っていきたいと考えている。事務局では当フォーラムの前、9月22日に狛江第一中学校の保健給食委員会の生徒5名と教職員3名を交えて、給食を食べながら意見交換会を行なった。以下のとおり紹介する。

「なぜ頼んでいるか。」ということについて

・親が弁当をつくるのが手間なので給食を頼んでいる。

・みんなで一緒に食べるものだから頼んでいる。

・迷わず給食を頼んでいる。

「量や味など」について

・少食なので今ぐらいで丁度良い。

・いつも味噌汁とごはんは二杯食べている。

・男子はおかずが少しでもごはんはたくさん食べられる。

・食缶でも弁当でもどちらでもいいが温かいものが食べたい。

・「安全」よりもうまい物が食べたい。

・缶詰でもよいので、果物を増やして欲しい。

・肉の焼いたものは、脂が固まっているので好きじゃない。

・肉の下に敷いてあるマクラの野菜はいらない。苦い。

・主菜はソースや薬味がかかっているようなものではなく、シンプルな味付けのものが良い。

・温野菜のような味付けを自分でするような副菜が良い。

・食べ慣れない味だと食べづらい(マスタード味など)。

「どんな給食を食べたいか」について

・小学校のような給食がいい(食缶方式、おいしさ、メニューなどの点で)。

・麺が主食で出てほしい。つけ麺やペペロンチーノ、ラーメンが食べたい。

・カレーライスに自分でコロッケなどを載せて食べるメニューは好き。

・カレーは温かいので良い。

「給食の選び方」について

・献立次第では、家から弁当を持参している。

・肉と魚両方好きだが、献立(調理法)をみて、ABの選択をしている。

「栄養」について

・給食の栄養バランスが良いのは知っている。

・ダイエットや体作りなどは、まだ考えていない。食べたい物を食べる。

・昼ごはんは、野菜を食べなければならないとは考えていない。

・家の食事で栄養バランスをとっているので、昼食でとる必要性を感じない。

その他、このような意見もあった。

・見た目で味を想像して食べないときがある。

・一時期髪の毛が入っていることがあったので、気になる。

・給食センターが建つことを知らなかった。

中学生の生の意見は非常に興味深く、また大人以上に的を射ていた。中には厳しい指摘もあるが、大変勉強になった。

 

○質疑応答

質疑:金田先生の2時間程度なら適温で提供できるという話が参考になった。現行の三鷹給食センターから出る時間を考えて、調理の開始時間が午前6時半頃から始まっているという話は聞いたことがあるが、できれば子どもたちも小学校と同じような給食を食べたいというのが願いである。4月前半の喫食率は非常に高いが、1か月経つと弁当に変える生徒がいるという話を聞いたことがある。ランチボックスの注文をやめる理由として、男子だとご飯200グラムでは足りないという話がある。この問題は食缶だと個々に量の調節ができるので、問題は解決できる。エレベーターや盛付けの問題もあるだろうが、「将来的に移行する提供方法」の将来的にという言葉を明確にしてほしい。4年後に移行では間に合わないのだろうか。また、食缶だと災害時にも対応できると思うので、色々なことを考えた上で、より良い給食センターを建ててほしい。

回答:意見として受けとめる。

質疑:コンセプトにおいて衛生管理、経済性の優先順位が高いということだが、食育を担う栄養士または栄養教諭の採用状況はどうなっているのか。

回答:狛江の場合、栄養教諭の採用はまだ行っていない。栄養士は小学校各1人、中学校は事務局で運営しているので正規職員の栄養士が1人、嘱託職員1人、臨時職員が1人で3人体制をとっている。

(パネリストから)学校現場での食育の活動についてだが、学級活動、保健給食委員会、家庭や地域との連携など様々な形で行っており、中学校の指導においては、社会科、家庭科、理科の授業の中で行っている。

質疑:現行のボックスランチ方式についての食育は行われているのか。

回答:(パネリストから)現行のランチボックスの食育に関しては、例えば学級活動の中で、バランスの良い食事は何か考えるような講義を行っている。また、保健委員会でアンケートをとり、その結果を今後の給食に反映できるよう検討している。

質疑:今回の将来的な計画によると、給食センターを市で建てることによって新規の栄養職員2名の採用枠ができると考えられるが、そういった増員は考えているのか。

回答:現在は民設民営で行っているが、給食センターが建てば、公設民営を予定している。運営に関しては財政事情もあり、業者委託の予定だが、給食の実施主体者として教育委員会が積極的に関わっていく。また、職員配置の増員等については、東京都や市長部局と調整する。

質疑:施設整備の財源に関して、学校給食と認められれば国から補助金が受けられると思うが、本施設は文部科学省から学校給食センターとして認められるものか。

回答:補助金に関しては細かく分類されているので、今説明することは難しい。他自治体の例として、佐賀市で本施設と同じような施設を建てたときには結果として2割程度の補助を受けたと聞いている。しかし、現在の状況では文部科学省の施設に関する財源が震災復興・復旧や耐震化などに充てられており、他のものに補助が割かれていない傾向がある。教育委員会としては今後の動向に注視し、情報収集に努めている。

質疑:施設整備にあたり、中学校給食を全員給食にするという考えはないのか。また、そういった呼びかけを保護者にしないのか。

回答:様々な考え方がある。中学校給食は、給食という位置づけで行っており、全員が給食を食べるよう目指している。当委員会はその考えに沿って検討を進めている。

質疑:給食センター周辺の樹木を切ることに反対している住民からセンターを他の場所に建ててほしいという意見も出ているが、しっかりした施設があれば、樹木があってもいいのではないか。高木が周辺にあってはいけないという決まりがあるのだろうか。

回答:(パネリストから)都及び市の条例において一定面積の緑地確保があるが、給食センターを食品工場と同等の施設として考えると、一般的には衛生管理の観点から植栽はしない。樹木があると虫が寄ってきて、吸排溝等に詰まったりし、異物混入の原因になりやすい。このことから管理の難しい樹木は植えない傾向にある。もし植栽するならば、忌避植物を植える。また、例えば広葉樹は特に虫が寄りやすいため撤去した方が良いとされている。この根拠となる基準はFAO及びWHOで国際的に定められているCODEXやISO22002であり、一般的には樹木は植えない方が良いとされている。

質疑:給食センター建設予定地周辺にあるのは、ヒマラヤスギやヒノキで広葉樹ではないので、樹木は切らなくてもいいのではないか。

回答:(パネリストから)広葉樹が特に植えない方が良いということであり、施設周辺に樹木は植えないということが一般的である。

 

(5)閉会・総括 上田委員

 上田委員から施設整備準備委員会として本日のフォーラムにおける金田先生の講演やパネルディスカッションの内容を踏まえ、給食の意義について再確認するとともに、子ども達や保護者の方々が求めている理想の給食に少しでも近づけるよう現実的な課題と向き合いながら、より良い給食を目指して給食センターの施設整備を進めていくことを述べ総括とする。

7 アンケート集計結果

 出席者から本フォーラムの感想を聞くため、以下にある3つの質問事項についてアンケートを行い、以下のとおり意見等をいただいた。

(1)基調講演について

 A.よく理解できた     26件

  ・大変わかりやすく参考になり、手づくりにこだわった給食を一番大事にして欲しい。

  ・大変わかりやすく、熱意ある講演にとても共感した。よくわかったからこそ、これから考え

   なければならない課題の多さを実感した。

  ・狛江らしい手づくり給食を考えなければならないことに気付いた。

 B.普通          5件

 C.あまり理解できなかった なし

 D.未回答         なし

 

(2)「給食センター施設整備にかかる進捗状況の報告」について

 A.よく理解できた     7件

 B.普通          13件

  ・給食センターからずれている質問があり、不本意だった。

  ・今後も広く市民の意見を聞く態勢を作ってほしい。

 C.あまり理解できなかった 9件

  ・HACCPの説明は進捗報告ではないと思う。

  ・内容はわかったが、参加者の質問は専門的なものが多くわかりにくい。

      ・現状の民設民営の施設では衛生管理の限界があるが、給食センター(公設民営)を設置して確

   実に解決されるのか。

  ・HACCP方式を導入すると言っても、民営だったら変わらないのではないか。インフラを

   整備しても運営面を重点に、人材育成をしなければただのハコづくりではないか。経済性が

   重視といっているが両立するのか。色々と疑問の残る報告だった。

  D.未回答         2件

 

(3)「パネルディスカッション」について

 A.よく理解できた     11件

 B.普通          14件

  ・金田先生のご意見を支持する。

  ・意見の内容がわかりやすい。

 C.よく理解できなかった  5件

 D.未回答         1件

 

(4)その他意見・感想

  ・金田先生の講演はわかりやすく、勉強になった。

  ・早く給食センターを建築してほしい。

  ・小学校のような食缶方式にしてほしい。

  ・選択制ではなく、全員で給食を食べるようにしてほしい。

  ・手づくり給食を実現してほしい。

  ・温かいものは温かく、冷たいものは冷たく、おいしい給食にしてほしい。

  ・おいしいより安全を考えてほしい。

  ・市民や中学生が完成を楽しみになるようなセンターを建ててほしい。

  ・給食を食べるだけでなく、「材料の生産→献立→調理→食べる」までの全体を楽しめるよう

   なセンターを期待している。

  ・現行のランチボックス方式で、A・Bの選択、注文する・しないの選択には疑問がある。

  ・子どもが中学にいるが、量が少ない、あまりおいしくないと言っている。

  ・現行の中学校給食で中学生の体格差による食べる量は適切なのか、疑問がある。

  ・保護者の方を交えた意見や思いを聞くことができ、今回のフォーラムは色々と考えることが

   できて良かった。

  ・最優先を子どもとして考えるなら、まずは保護者への説明、食育指導などを進めて理解して

   もらうことが大切だと思う。

  ・小中学校保護者の意見をもっと聞きたかった。

  ・現行のボックスランチ方式の給食では、喫食率は今と変わらない。

  ・食缶方式の方が、災害時にも提供できるのではないか。

  ・衛生管理と経済性を重要視していることは理解できた。現在の業者では衛生管理に限界があ

   るということなので、新しい施設を一から作り、十分な衛生管理を行って欲しい。

  ・事務局から説明があった5つのコンセプトで、優先順位として2番目に経済性が高いのは理

   解できたが、生徒の喫食率が高くならなければ、良い施設が出来ても意味がない。

  ・大きなお金が動く事業になるので、時間を掛けて検討するべき。

  ・現在の中学生の保護者への説明だけでなく、もっと小さなお子さんの保護者の意見も聞くこ

   とが大切だと思う。

  ・今回のようなフォーラムは重要であり、意義のある内容だったので、録画して後日、役所の

   HPで流すなどもっと多くの市民が情報に触れられると良いと思う。

  ・現行の衛生管理以外の問題についても、もっと整理して紹介してほしい。小学生の母として

   は何が問題かわからない。

  ・食育の方法についても、ポスターを貼るだけ、プリントを配布するだけではなく、必要な時

   に必要な内容を子どもたちにタイムリーに指導してほしい。

  ・地場野菜の残留農薬や放射線を検査の上、給食を提供してください。

  ・パネルディスカッションで、参加者からの質疑を金田先生がフォローしていたので、もっと

   しっかり対応してほしい。

  ・汚染の問題など保護者の心配している声を無視しているようで残念だった。

  ・お肉の下の野菜を残すのは、子どもたちが飾りの様に思っているのではないか。サラダや和

   え物の味付け、見た目を工夫して食べさせてほしい。

  ・異物混入などの衛生管理の課題は重要だが、そこにこだわりすぎて、給食そのものの目的が

   ぶれているように感じる。

  ・衛生管理は条件であって、目的ではないと思う。

  ・子どもが少なくなっていくので、老人養護施設に利用できるように考えてほしい。

  ・保護者は小学校給食のように中学校でもそれぞれの給食室を建てることを希望していたの

   で、狛江市で給食センターを建てると聞いて驚いている。

  ・食缶方式を大きく取り上げている。スクールランチを実現するには、統廃合の際に教育委員

   会で議論がきちんとされることが必要だと思う。時期が遅れないように議題にしてほしい。

  ・市民の要望、現状での問題点など具体的な資料があると、パネルディスカッションの議論が

   もっとわかりやすかったと思う。

  ・基調講演のパワーポイント資料もあれば良かった。

  ・フォーラム以外の市の情報を持った方が、それを発言することはやめるように前もって止め

   てほしい。

  ・条例もあるが、議員は公聴のみで出席するようにしてほしい。